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みなさんこんにちは。
藤沢市鵠沼海岸の歯医者、くげぬま海岸歯科クリニックです。
今日は、下顎の親知らずを抜歯する際のテクニックの一つである『歯冠除去術』について解説します。
神経損傷のリスクを下げることができる『歯冠除去術』
下顎の親知らずの抜歯をご希望されている患者様の中には、
「親知らずが下顎神経と癒着している」
「親知らずを抜いた後に、顎や唇にしびれが出る可能性がある」
「大きい病院でないと抜けない」
と他院さんで言われた方も多いと思います。
下の親知らずのすぐ下には、下歯槽神経と呼ばれる大事な神経が通っています。
この神経は、下唇と下顎の知覚を支配しています。
そのため、親知らずの「歯根」と下歯槽神経が近い場合、どんなに上手な先生が施術したとしても、ある一定の割合でしびれ(麻痺)が生じてしまいます。
当院では神経損傷のリスクを下げるために、必要に応じて『歯冠除去術』を行っています。
『歯冠除去術』は、『歯冠切除術』または『コロネクトミー』とも呼ばれる手法です。
通常の親知らず抜歯では、歯冠と歯根を含めて親知らず全体を取り除きます。
一方、『歯冠除去術』は、親知らずの歯冠部分だけを取り除き、神経に近い歯根部分はあえて骨の中に置いてきます。
神経損傷が起きてしまう可能性はどれくらいある?
一般論として、下歯槽神経の損傷の大半は、親知らずを抜歯する際の圧迫が原因だと言われています。
海外の報告では、一過性(3ヶ月くらいで治る)のしびれ(麻痺)発生頻度が1.2%、永久に残るしびれ(麻痺)が0.2%とされています。
また、親知らずの近くには下歯槽神経に加えて舌神経(味覚を司どる)と頬神経(頬内側の知覚を司どる)も走行しています。
下歯槽神経ほどではありませんが、ごく稀に舌神経と頬神経の損傷が起きてしまうこともあります。

②舌神経麻痺(舌の半分の前の方がしびれます。また、舌の前2/3の味覚も失われることがあります。)
③オトガイ神経麻痺(①より範囲が狭い下唇の一部周辺がしびれます。)
*医療用語的には、麻痺は運動神経に使う用語です。よって正確には、神経の知覚異常もしくは鈍麻となります。
当院における親知らず抜歯後の神経損傷の経験数
下歯槽神経麻痺で3例、舌神経麻痺で1例、経験しています。
頬神経麻痺は幸い、経験していません。
4例とも3ヶ月以内に完全にしびれ感(麻痺感)はなくなりました。
ただ、私自身にも患者様にも、しびれが完全に無くなるまでは、相当なストレスがかかったことは否めません。
畳の上で長時間正座した後の足のしびれと同じような不快感が、唇や顎や舌に起きてしまうのですから、、、
そのような経緯もあり、当院では、親知らずの「歯冠」だけを取り除き、「歯根」はあえて置いてくる『歯冠除去術』を行っています。
神経に近い箇所を触らなければ、神経への圧迫も生じにくいわけですから、神経損傷のリスクを少なくすることができます。
『歯冠除去術』の施術例


神経と親知らずの「歯根」が近接していることがわかります。

キレイに「歯冠」のみが切断され、取り除かれました。
『歯冠除去術』のメリット
『歯冠除去術』の大きなメリットは、神経に接している「歯根」をあえて触れずに置いてくることで、下歯槽神経への圧迫が生じにくい=麻痺の発症リスクを軽減できることです。
また、親知らずの「歯冠部分」だけでも取り除くことで、手前の歯への圧迫による歯列不正、清掃不良による歯周病と虫歯の進行、などを軽減できることがあります。
加えて、通常の親知らず抜歯と比較すると、やることが半分ですので、痛みと腫れも半分、施術時間も半分、程になるメリットもあります。
『歯冠除去術』のデメリット
『歯冠除去術』は、神経損傷リスクを抑えるには有効な手法ですが、リスクがゼロになるわけではありません。
施術後には、通常の親知らず抜歯と同じように、痛み、腫れ、出血、感染、ドライソケットなどが生じる可能性があります。
また、骨内にあえて置いてきた「歯根」が、時間の経過とともに少しずつ前方に移動することがあります。
私の経験では、「歯根」が移動しない方が半数、残り半数の方は「歯根」がゆっくりと前方移動していくため、数年後には再度の抜歯が必要になります。
そして残念ながら、歯根が元々感染している場合、非常に大きい虫歯が親知らずにある場合、嚢胞がある場合などは、『歯冠除去術』は非適応となります。
まとめ
当院では、下の親知らず抜歯後の後遺障害を最小限にするために『歯冠除去術』を行っています。
下歯槽神経損傷を防ぐには、非常にメリットがある手法です。
しかし、全ての方に適応となるわけではありません。
親知らずの位置・深さ・角度・神経との距離を考慮して、初診検査後に『通常抜歯』と『歯冠除去術』のどちらが適応かをご説明しています。
親知らずでお悩みの方は、お気軽にご相談下さい。