親知らず抜歯症例
2026年 07月 06日

親知らず症例 矯正治療前に、神経に近い親知らずを、歯冠除去術(歯冠切除術・コロネクトミー)で抜歯したい。

年齢・性別

40代・男性

来院動機

矯正治療のスタート前に、下の横向きの親知らずを抜いて欲しい。
できるだけリスクの少ない手法がいい。

治療内容

Before

治療前のCT写真①

右下の親知らずが骨内の深い位置に横たわっています。

治療前のCT写真②

紫色の部分が下歯槽神経です。
神経と親知らずの「歯根」が近接していることがわかります。

治療内容・説明

下顎の親知らずの抜歯をご希望されている患者様の中には、
「親知らずが下顎神経と癒着している」
「親知らずを抜いた後に、顎や唇にしびれが出る可能性がある」
「大きい病院でないと抜けない」
と他院さんで言われた方も多いと思います。

下の親知らずのすぐ下には、下歯槽神経と呼ばれる大事な神経が通っています。
この神経は、下唇と下顎の知覚を支配しています。
そのため、親知らずの「歯根」と下歯槽神経が近い場合、どんなに上手な先生が施術したとしても、ある一定の割合でしびれ(麻痺)が生じてしまいます。

当院では神経損傷のリスクを下げるために、必要に応じて『歯冠除去術』を行っています。
『歯冠除去術』は、『歯冠切除術』または『コロネクトミー』とも呼ばれる手法です。
通常の親知らず抜歯では、歯冠と歯根を含めて親知らず全体を取り除きます。
一方、『歯冠除去術』は、親知らずの歯冠部分だけを取り除き、神経に近い歯根部分はあえて骨の中に置いてきます。

神経損傷が起きてしまう可能性はどれくらいある?

一般論として、下歯槽神経の損傷の大半は、親知らずを抜歯する際の圧迫が原因だと言われています。
海外の報告では、一過性(3ヶ月くらいで治る)のしびれ(麻痺)発生頻度が1.2%、永久に残るしびれ(麻痺)が0.2%とされています。
また、親知らずの近くには下歯槽神経に加えて舌神経(味覚を司どる)と頬神経(頬内側の知覚を司どる)も走行しています。
下歯槽神経ほどではありませんが、ごく稀に舌神経と頬神経の損傷が起きてしまうこともあります。

①下歯槽神経麻痺(片方の下顎の前方がしびれます。)
②舌神経麻痺(舌の半分の前の方がしびれます。また、舌の前2/3の味覚も失われることがあります。)
③オトガイ神経麻痺(①より範囲が狭い下唇の一部周辺がしびれます。)
*医療用語的には、麻痺は運動神経に使う用語です。よって正確には、神経の知覚異常もしくは鈍麻となります。

抜歯後のCT写真

『歯冠除去術』後のCT写真。
キレイに「歯冠」のみが切断され、取り除かれました。

Dr.より

『歯冠除去術』の大きなメリットは、神経に接している「歯根」をあえて触れずに置いてくることで、下歯槽神経への圧迫が生じにくい=麻痺の発症リスクを軽減できることです。
また、親知らずの「歯冠部分」だけでも取り除くことで、手前の歯への圧迫による歯列不正、清掃不良による歯周病と虫歯の進行、などを軽減できることがあります。
加えて、通常の親知らず抜歯と比較すると、やることが半分ですので、痛みと腫れも半分、施術時間も半分、程になるメリットもあります。

『歯冠除去術』もデメリットはあります。
神経損傷リスクを抑えるには有効な手法ですが、リスクがゼロになるわけではありません。
施術後には、通常の親知らず抜歯と同じように、痛み、腫れ、出血、感染、ドライソケットなどが生じることもあります。
また、骨内にあえて置いてきた「歯根」が、時間の経過とともに少しずつ前方に移動することがあります。
私の経験では、「歯根」が移動しない方が半数、残り半数の方は「歯根」がゆっくりと前方移動していくため、数年後には再度の抜歯が必要になります。

症例の治療に必要な標準的な費用

親知らずの抜歯・CT・抜糸など親知らずにかかる費用は保険適応になっています。

副作用・リスク

術後、痛み・腫れが出ることがあります。
だいたいの場合は徐々に落ち着きますが、痛みが強くなったり痛み止めを飲んでも効かない場合は対応させていただきます。

この記事を書いた人
院長 三浦陽平

くげぬま海岸歯科クリニック 院長の三浦 陽平です。何歳になってもしっかり噛めるように、すてきな笑顔でいられるように、20年後・30年後を見据え、やり直しがない本当に良い治療を提供していきたいと思っています。

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