院長ブログ

院長 三浦 陽平

2024年 06月 08日

親知らずと神経が近いと言われた方へ 「歯冠除去術」と「親知らず抜歯2回法」をお勧めします。

下の親知らずが痛くなって歯医者さんに行ったら、もしくは矯正治療のために親知らず抜歯を薦められた際に、「顎の神経と親知らずが近いので、親知らずを抜いた後に神経麻痺(損傷)が起きるかも知れない。」と説明されることがあります。

下の親知らずが深い位置に埋まっている方は、下唇の知覚を司る下顎神経と親知らずがくっついていることがあります。
親知らず抜歯の偶発症として、0.1%から0.7%の確率で下顎神経麻痺は生じてしまうと言われており、私たちが細心の注意を払っても100%避けることはできません。
不幸にして偶然起きてしまう事象が偶発症の定義ですが、患者様の立場からすると『もし自分の身体に生じてしまったら???』と不安に思われるのは当然です。

特に下唇の感覚は日常生活を送る上で、必要不可欠であり、運悪く下顎神経の麻痺が生じてしまうと
・下唇がじんじん、ビリビリ、チリチリする異常感覚に常につきまとわれる。
・下唇の知覚が失われるので、会話がしにくく、食べ物を食べにくく、なる。
・下唇周囲の顎にも痺れが生じてしまう。
以上のような不快症状に患者様は日々を悩むことになってしまいます。

そのようなリスクを防ぐために、当院では「歯冠除去術」を患者様に提供しております。
文字通り、親知らずの上半分にあたる『歯冠』だけを切除(抜く)するテクニックです。
神経と近い親知らずの下半分『歯根』にはノータッチなので、神経損傷が生じる可能性を0に近づけることができます。

「歯冠除去術」を行なった後に、顎骨の中にあえて残してきた『歯根』が移動してこない場合は、それで終了です。
しかし、年単位で経過を追っていくと『歯根』が移動してくることもあります。
その場合は「親知らず抜歯2回法」をご提案します。
既に、神経と『歯根』が離れているので、ほぼノーリスクで『歯根』を抜くことができます。

もちろん、すべての症例に適応となるわけではありませんので、初診検査の際に詳しくご説明します。

「歯冠除去術」の症例紹介

左下の親知らずの抜歯を希望されて来院された患者様の初診時レントゲン写真。
他院さんで親知らずと神経が近いために、神経損傷のリスクを指摘されていました。
黄色でトレースした箇所が下顎神経です。
親知らずと神経が寄り添っていることが分かります。
3次元のCT写真による診断でも、ガッチリ親知らずと神経がくっついています。
このようなケースでは「歯冠除去術」が非常に有効となります。
「歯冠除去術」終了後のCT写真。
神経と癒着している可能性のある『歯根』だけを残して、痛みの原因となる『歯冠』のみを抜歯しました。
「歯冠除去術」から5年後のレントゲン写真。
このように全く『歯根』が全く前方に移動してこない場合は、あえて『歯根』を抜く必要はなく、治療終了となります。

「歯冠除去術」の費用
 健康保険の適応となります。
 約10,000円(窓口3割負担の場合)
 *CT撮影 投薬料 抜歯代 含む

「親知らず抜歯2回法」の症例紹介

初診時のCT写真。
親知らずが腫れて痛くなり当院を受診されました。
紫色の部分が、下顎神経です。
まず「歯冠除去術」を行いました。
神経と癒着している可能性のある『歯根』のみを残しています。
「歯冠」だけを抜いてから3年経過後のCT写真。
「歯根」が前方(右側)に移動し、神経と離れたことが分かります。
全て抜歯した後のレントゲン写真。
安全にかつ簡易的に『歯根』を抜歯して治療終了となります。

「親知らず抜歯2回法」の費用
 健康保険の適応となりません。
 55,000円(税込)の費用を頂きます。
 *CT撮影 投薬料 抜歯代 含む

「歯冠除去術」「親知らず抜歯2回法」のリスク
・欧米では認知されている手法だが、日本ではマイナーなテクニックです。
・大学病院や総合病院では、あまり行われていません。
・日本では充分な症例報告数があるとは言い難い状況です。
・術後に腫れと痛みを伴うことがあります。



この記事を書いた人
院長 三浦陽平

くげぬま海岸歯科クリニック 院長の三浦 陽平です。何歳になってもしっかり噛めるように、すてきな笑顔でいられるように、20年後・30年後を見据え、やり直しがない本当に良い治療を提供していきたいと思っています。

院長の投稿一覧