院長ブログ

院長 三浦 陽平

2026年 10月 31日

当院で活用しているショートインプラントについて解説します。

みなさんこんにちは。
藤沢市鵠沼海岸にある歯医者、医療法人社団くげぬま海岸歯科クリニックです。

インプラント治療は、骨が十分にある場合は、それほど難易度は高くなくシンプルに進められます。
問題は、骨が少ないケースです。
「骨が足りないので、骨を増やす手術が必要です」
「上顎の骨が薄いので、副鼻腔炎になるリスクがあります」
「下顎の神経と近いので、インプラントはお勧めしません」

他院さんで、このような説明を受けた方もいらっしゃると思います。
今日は、骨が少ないケースで私がよく使っている、ショートインプラントについてお話しします。

患者様の骨量に合わせてインプラントを選択します

ショートインプラントとは、文字どおり、短いインプラントのことです。
長さ10ミリ以上がレギュラーサイズ。
長さ5ミリ〜7ミリくらいのサイズのインプラントを「ショートインプラント」と定義付けていることが多いです。

ショートインプラントは奥歯に使用します。
奥歯は垂直的な骨量が足りないことが多く、また水平的な骨量には余裕があることが多いからです。
つまり、ショートインプラントは『太くて短い』『とっくりみたいな形をしている』とイメージして頂けるとわかりやすいですね。

左が当院でも使用している最も太くて短いショートインプラント。
右が従来からあるスタンダードサイズのインプラント。

当院でショートインプラントを取り入れたのは、2015年。
骨の高さが足りない奥歯を、できるだけ少ない負担で治すための選択肢として、現在も最大限に活用しています。

従来の長いインプラントを入れるために、サイナスリフトやGBR法などで、まず骨を増やす。
その手法を否定するつまりはありませんが、ショートインプラントを活用することで、プラスαの外科的な負担を減らし、結果として患者様の痛みと腫れを最小限に抑え、治療期間と治療回数も少なくすることを重視しています。

上の奥歯では上顎洞(副鼻腔)までの距離がポイントです

上の奥歯の上方には、上顎洞(副鼻腔)という大きな空洞があります。
骨が薄い方では、この空洞までの距離が近く、長いインプラントを埋め込むための高さが足りないことがあります。

このような場合においては、ショートインプラントが役立ちます。
患者様自身の骨の高さでインプラントをしっかりと安定させることで、大規模な骨造成を避けられるからです。

もちろん、骨の厚みが非常に少ない場合は、短いインプラントでもそのまま埋め込むことはできません。
ショートインプラントの長さよりも骨量が少ない場合は、上顎洞の底の粘膜を持ち上げるソケットリフトを併用します。

ここでも、短いインプラントを選ぶメリットがあります。
長いインプラントを埋め込む手技と比べて、必要となる骨の高さを少なくできれば、より低侵襲のオペが可能となります。

この考え方は、最近の論文でも報告されています。
2026年10月号に掲載された、8つのランダム化比較試験をまとめた解析では、骨の少ない上の奥歯において、8ミリ以下のショートインプラントと、上顎洞の骨を増やして埋め込む標準的な長さのインプラントとの間で、失敗率に統計学的な有意差は認められませんでした。

10年前は手探りでショートインプラントを使用してきた側面もありましたが、現在においてはエビデンス(科学的根拠)に基づいた治療方法と言うことができます。

下の奥歯では下顎神経(下顎管)までの距離がポイントです

下顎の骨の内部には、下唇や顎の感覚に関わる神経が通っています。
下顎神経の通り道のことを、わたし達は「下顎管」と呼んでいます。
長期間の入れ歯の使用により骨が痩せてくると、この神経との距離が近くなってしまいます。

当院ではすべてのインプラント治療おいて、CTを撮影し3Dシミュレーションを行うことで、下顎管までの骨量を計測しています。
論文的な安全域としては、埋め込んだインプラント先端と下顎管までの距離が2ミリあれば問題ないと言われています。
しかし、私の考え方としては、いつもインプラント先端と下顎管までの距離を4ミリ確保することを心がけています。

・CTの画像にも若干の歪みはある。
・施術中に患者様が動くことで、1ミリくらいのズレが生じることもある。
・狭い口腔内において、3Dシミュレーションと完全に同じ位置にインプラントを埋め込むことはそもそもが難しい。
・患者様のお口の開けれる量(開口量)が少ない場合は、インプラントを斜めに埋め込む場合もある。

以上のシビアな条件下においては、ジャスト2ミリで長めのサイズのインプラントを埋め込むのではなく、余裕を持ってできるだけ短いインプラントを埋め込むことが、下顎管(下顎神経)の損傷を避けるために有効だと私は考えています。

極力短いショートインプラントを使用することで、骨を増やす手術を併用しなくても、安全な施術ができます。

誤解を恐れず言ってしまえば、上顎奥歯のインプラント治療のトラブルとしての副鼻腔炎は、耳鼻科の先生に対処をお願いすれば、完治が可能です。
しかし、下顎奥歯のインプラント治療のトラブルとしての下顎神経損傷は、万が一起きてしまうと、現在の医学技術では治すことがほぼ不可能です。
(軽度神経損傷の場合は3ヶ月ほどの投薬で対処できますが、重度神経損傷の場合は神経吻合術などを行なっても、神経機能の回復は5割から7割程度)
神経損傷が起きてしまった場合の、症状としての神経麻痺(痺れ)の辛さは、正座した場合の足の痺れが唇を顎にきてしまうイメージです。

絶対に執刀医側のヒューマンエラーにより起こしてはいけないトラブルが下顎神経損傷だと、私は考えています。
当院で採用している、最も短いショートインプラントは骨内に5ミリ埋め込むもの。
最新のインプラントを活用することで、よりシンプルで安全なインプラント治療を行なっています。

当院で使用している最も短いショートインプラントはこちら

当院のメインインプラントシステムであるメガジェンインプラントのラインナップにはスペシャルレングスと呼ばれる、ベリーショートインプラントが用意されています。

こんなに短くで大丈夫なの???
と心配される方もいるかも知れません。
しかし、論文的な根拠も出揃いつつあります。

直径4ミリ長さ10ミリの通常のインプラントの表面積は152ミリ平方メートル。
直径5ミリ長さ7ミリのショートインプラントの表面積は167ミリ平方メートル。

よって骨と接触する面積は、実はショートインプラントの方が大きいのです。

2016年に発表された医学論文によると、

Short(6-mm)dental implants versus sinus floor elevation and placement of longer (≧10mm) dental implants: a randomized controlled with a 3-year follow-up.Bechara S,et al. Clin Oral Implants Res.2016

長さ6ミリのショートインプラントは、骨造成し長さ10ミリ以上のインプラントを使用した場合と同様の結果であった。

短くても太さでカバーすることで『ショートインプラント』は、従来の長いインプラント以上の表面積を有します。
患者様の顎骨と接触する表面積が大きいことで、『ショートインプラント』は長期に渡り安定することが実証されつつあります。

当院において、『ショートインプラント』を取り扱ってから10年以上が経過しましたが、トラブルは1症例もありません。

全顎(フルマウス)治療症例 ショートインプラントを活用した全顎治療

年齢・性別

60代・女性

来院動機

下の入れ歯がとにかく痛くて、食事ができない。
下の奥歯が痛くて困っているのに、これまで受診した歯科医院では上の前歯のセラミック治療が中心で、下の奥歯について十分な治療を受けることができなかった。

また、右下には埋伏歯(顎の骨の中に埋まっている歯)があるため、顎骨が少なく、インプラント治療は難しいと言われてしまった。
骨が少ないことは自覚しているが、インプラントでしっかり噛めるようにして欲しい。

治療前の精密検査

初診時のレントゲン写真

長年の入れ歯の使用で、下顎の歯槽骨が大きく吸収し、非常に痩せた状態でした。

初診時の口腔内写真

上の前歯にセラミックブリッジが入った後の転院でした。
見た目はキレイなのですが、実は下の前歯をあまり噛んでいない状態でした。
左側からの口腔内写真。
左下の歯茎の骨が痩せています。
また、上のセラミックブリッジが前方に突出していることも分かります。
右側からの口腔内写真。
左側よりもさらに顎骨の吸収が進んでいます。
上のセラミックブリッジと下の前歯があまり噛んでおらず、下の入れ歯の沈み込みが顎骨の吸収を引き起こしたと推測されます。
上顎の口腔内写真。
下顎の口腔内写真。
入れ歯を使用している時はこのような感じです。
金属のバネが目立ちます。
食事のたびに入れ歯が沈み込み、歯ぐきを圧迫して痛みが生じる状態でした。

治療方針

赤線に囲まれた部分が埋伏歯、青線が顎骨の過度な吸収部となります。

下顎右側に埋まっている埋伏歯が、インプラントを埋入する際の障害となっていました。
インプラントは骨とは結合しますが、埋伏歯とは結合しないため、やはり抜歯が必要となります。
しかし、横たわっている埋伏歯を抜くには、前方に位置している健康な前歯も抜かなくてはいけなくなります。
熟慮した結果、埋伏歯を真ん中で切断し、前歯の直下にある歯冠部には手をつけず、インプラントを埋め込みたい位置にある歯根部のみを取り除くことを提案しました。
私が得意としている親知らずと下顎神経が近い場合に行なっている歯冠除去術をインプラントにも応用しました。

また、下顎左右ともに、歯槽骨の吸収が大きいため、以前であれば大規模な骨造成手術が必要とされるケースでした。
大規模な骨造成を行うのではなく、短いインプラントである「ショートインプラント」を使用することで、できるだけ侵襲を抑えた治療計画を立てました。

このような短いインプラント(ショートインプラント)を使用することで、顎の骨が大きく吸収している患者さんでも、骨造成を行わずにインプラント治療を検討できる場合があります。
入れ歯の使用により顎骨が痩せてしまった方でも、シンプルな施術が可能となります。

上の前歯のセラミックブリッジは他院さんでセットした直後のタイミングであったため、迷うところもあったのですが、当院での再治療をご提案しました。
もともとの歯根が前方に傾斜していたため、下の前歯と十分に噛み合っていなかったこと。
下の入れ歯を十分に使用できず、前歯ばかりで噛んでいたために、セラミックブリッジそのものがグラグラしていたこと。
以上2点を患者様にご説明して、インプラントでしっかり噛める前歯を再建することになりました。

治療後のレントゲン写真

顎骨の過度な吸収があった下の左右の奥歯にはショートインプラントを3本ずつ埋め込んでいます。
また、右上の部分にもショートインプラントを埋め込みました。
上の前歯には、長いサイズのインプラント2本を埋め込んでいます。
また、下顎右側の埋伏歯は歯冠のみ残しています。

治療後の口腔内写真

合計9本のインプラントと14本のセラミックによって、機能性と審美性に配慮した噛み合わせを再構成しました。
側方から見ても、緊密な噛み合わせが付与されました。
また前歯の噛み合わせも改善されました。
右側も同様にがっちり噛んでいることがわかります。
天然歯を完全模倣した美しいセラミック歯が入りました。
下顎も天然歯と同じ形態を模倣した美しいセラミック歯が入りました。

インプラント&フルマウス治療担当歯科技工士の紹介

当院の全顎治療(フルマウス治療)における、全てのインプラント上部構造とセラミック歯の作製を担当しているのは、歯科技工士の高畑寿也先生。
これまで手がけてきた全顎治療(フルマウス治療)の症例数は1,000以上と、抜群の技術と経験を有しています。
高畑先生は補綴技術は本当に素晴らしく、矯正担当の芝田先生と並んで、私が信頼するベストパートナーの一人です。
私と高畑先生がタッグを組むことで、患者様にしっかり噛めて長期的にも安定する噛み合わせを提供いたします。

症例の治療に必要な標準的な費用

奥歯インプラント6本→2,640,000円(税込)
《1本あたり440,000円(税込)》
前歯インプラント2本→990,000円(税込)
《1本あたり495,000円(税込)》
前歯インプラントダミー→330,000円(税込)
《1本あたり165,000円(税込)》
前歯プレミアムセラミック8本→1,320,000円(税込)
《1本あたり165,000円(税込)》
奥歯プレミアムセラミック6本→858,000円(税込) 
《1本あたり143,000円(税込)》
ファイバーコア5本→110,000円(税込)
《1本あたり22,000円(税込)》
咬合再構成(精密咬合診断・咬合デジタルデザイン・3段階のプロビジョナル・噛み合わせ治療)22本→924,000円(税込)
《天然歯・インプラントダミー1本あたり33,000円(税込)/インプラント1本あたり44,000円(税込)》

総額 7,172,000円(税込)

主なリスク・副作用

インプラント治療には「腫れ・痛み・違和感・出血・感染」などのリスクがあります。 
また、まれにインプラントと骨が結合しないことがあります。 
もし万が一、インプラントと骨が結合しない場合は、すぐに再埋入手術を無料で行わせていただきます。
当院のインプラント治療には10年保証が付いていますので、ご安心下さい。
セラミックがまれに欠けたり割れたりすることがあります。
当院のプレミアムセラミック治療には10年保証が付いていますので、トラブル発生時には無料対応いたします。
(半年に1回の検診が、保証の条件となります。)

この記事を書いた人
院長 三浦陽平

くげぬま海岸歯科クリニック 院長の三浦 陽平です。何歳になってもしっかり噛めるように、すてきな笑顔でいられるように、20年後・30年後を見据え、やり直しがない本当に良い治療を提供していきたいと思っています。

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